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参考資料 課題点の検証  解決の手段 効果の検証 今後に向けて

【参考資料】

以下の移植器は平成8年に開発したもので「YTガン」の原型になったモデルです。(画像をクリックすると拡大します)

構成および材質

再使用を考慮してパーツ毎の分解洗浄を可能にして、高圧蒸気滅菌にも耐え得る素材を選択してます。
使用および操作方法(受精卵のセッティング)
1.ノズル体をガイド管内に収めた状態を保ち頸管経由法で本体先端を目的の子宮角まで進める。
2.先端が確実に子宮角内に入ったらチューブを前方へ送り出してノズル体を子宮深部へ挿入させる。
3.目的の深さへ達したらシリンジを押して注入液を子宮内に放出する。
実際に移植に使用した結果は、それまでの直管型移植器に比較してワンランク上の受胎率(5~15%)まで向上させる可能性を感じることができ、高い機能を秘めていることが確認できました。 しかし、使いこなすには特異かつ繊細な操作技術が伴わなければならず、その構造的要素から逆に受胎率を下げてしまう課題も露呈されました。

【課題点の検証】

① 先端ノズルが固定できない

参考移植器はガイド管に可撓性チューブをむき出しのまま押出自在に挿入していることでガイド管とチューブとの間で望ましい摺動抵抗が得られ難く先端ノズルをガイド管に引き込んだ状態に保持するには先端部位の高い加工精度が要求される。 特に子宮頸管疎通時において先端ノズルが不用意に吐出すると頸管内部に重大な損傷を与える可能性があるため、加工精度の得られない場合はガイド管後方より出ているチューブ部位をピンチコックで挟む等の簡易的措置が必要となる。

② 押出操作部位が座屈する

目的部位である子宮角深部へチューブを挿入させる際には押出操作部位が可撓性ゆえに座屈し易く1回の押出操作(1ストローク)で目的部位へ進ませるのは殆ど困難で、同じ操作を複数回反復しなければ達成できない。 その際、湾曲した子宮形状由来の挿入抵抗により押し出せない場合や、押し出した長さの一部が押し戻される場合があり、柔らかい粘膜で覆われた子宮内壁の同一部位を反復して刺激することは受胎率を下げる要因となり得る。

③ 可撓性チューブの素性要求が異なる

ガイド管内を自在にスライドする可撓性チューブは押出操作時に手元での座屈防止のために剛性が要求され、摩擦係数が低くタック性(粘着性)のない素材に限られる。
一方、子宮内に進入する部分は子宮内壁にソフトな柔軟性の高い素性のチューブが要求される。

④ 可撓性チューブの素材選択が限定される

同一チューブに求める素性の異なる部分が同居するために、摺動性&柔軟性&耐キンク性(折れ曲がりや捻れに強い)が適合する素材は極めて限定的となる。 これらの要因で、シリコンゴム・軟質PVCなどの子宮内壁にソフトで柔軟性が高い素材は、表面にタック性を帯びているものがあり、押出操作部位の座屈とガイド管内面との強い摺動抵抗により選択することは殆ど不可能である。 使用可能なチューブの素材としてタック性の無いフッ素系樹脂チューブが筆頭に考えられるが硬度が高いために寸法的要素(外径・内径・肉厚)のみで柔軟性を創出しなければならず、結果として比較的細いものに限定される(例:テフロンAWG22など)。
しかし、チューブが細くなると先端ノズルが吐出した後のガイド管とチューブとの隙間は大きくなり、エッジ部により子宮内壁を損傷する場面が危惧される。
チューブと外筒の間隙

⑤ 移植操作が繊細で野外作業に脆弱である

移植器後端から伸びるチューブはたいへんデリケートであり、野外移植においては隣に繋留されている牛の尾が触れるなどのちょっとしたアクシデントにより移植不能となるケースがあった。 また、寒冷期の開放型牛舎では移植操作に手間取り、注入液(受精卵を含んだ液)がチューブ内で凍結したことがあり、特異かつ繊細な操作を要する構造は野外作業に極めて脆弱である。

【課題解決の手段】

全体が可撓性チューブから成る注入管を、可撓性が邪魔な部位(全長の75%が対象)を 剛性化 して子宮深部に進入する部分のみ可撓性を残した注入管にする。 (具体的には可撓性チューブに剛性管を接続、もしくは肉薄剛性管で被覆する等)

【効果の検証】

① 先端ノズルの固定が容易

剛性部分に 若干の曲げ加工 を施すことでガイド管との間に望ましい摺動抵抗を任意に付加することが可能となる。 この摺動抵抗によって注入管先端ノズルをガイド管内に引き込んだ状態に保持することが容易となる。

② 押出操作が単純化される

操作部位が剛性であるために子宮形状由来の挿入抵抗にも座屈することなく単純な1ストロークの直線的押出しで深部への挿入が可能となる。 また、注入管を 自在に回転させる ことも可能であり、適度な摺動抵抗との組み合わせで更に速やかな挿入ができる。 このことにより移植時間の短縮が可能となり作業の効率化と受胎率の向上が望める。

③ 挿入感が術者に伝わり易い

剛性部位主体の注入管は可撓性チューブのみの注入管と比較して、子宮形状由来の微妙な挿入抵抗がリアルに術者に伝わり易い。 このため、術者がレスポンシブに挿入加減を調整することができ、子宮内形状に順応した挿入が可能となる。

④ 可撓性チューブの素材選択肢が広がる

押出部位の座屈が解消されて内筒全長の75%を剛性部位で占めるために、チューブ単体では硬度不足とガイド管との強い摺動抵抗により全く選択が不可能であった素材も広く選択肢に入れることが可能となった。 このため、シリコンゴム・軟質PVCなどの柔軟性が高く子宮内壁にソフトな素材は多少のタック性があっても十分採用できる。 更に、ガイド管内径に近い太めのチューブも選択可能で、 先端ノズルが押し出された後の ガイド管とチューブとの隙間 も小さくすることが可能となり、エッジ部による損傷不安も緩和される。

⑤ 野外移植での脆弱性が緩和される

繊細な扱いが要求されるむき出しチューブが剛性管に替わったことで構造が堅牢になり、加えて移植時間の短縮が望めるために野外環境による脆弱性が大幅に緩和される。

【今後に向けて】

今後に向けてリサイクル型「YTガン」の開発を検討していますが、安全性が担保された柔軟性・耐久性・耐高温性(高圧蒸気滅菌対応)を有するチューブ素材を広く探索しています。 また、寒冷期移植を視野に断熱性の高い素材と熱伝導性の低い構造も検討中です。